獅子王とあやめ姫

 城内の使用人たちは何人かずつに部屋を割り当てられ、そこで寝起きしていた。

 何年か前までは粗末な寝具など必要最低限のものが並べてあるだけの殺風景な作りだったが、第一王子ティグリスの計らいで家具の質も上がり、いい香りの花まで置かれるようになった。

 派閥争いが激化するなか、少しでも人望を集めようとする狙いもあるのは彼女たちも重々承知である。

 だがそれ以外にも何か別の優しさがあるんだと思わせる何かが第一王子にはあったのだ。

 そんな王子の優しさや気遣いにあてられてか、メイド達はすっかり彼を慕っていて、その動向を逐一気にしては噂話に花を咲かせていた。

 彼女達の憧れの的である王子から直々に特別な用を仰せつかったパピアは、いまや城のティグリス派のメイド達の間では羨望の的だった。

 瓶の水で顔を洗っていると、メリッタが着替えを始めながら声を掛けてくる。

「ねぇパピア。あの方の調子はどうなの?」