獅子王とあやめ姫

 「えっ、何、えっ?」

 驚くテリの手にマンダリーニを半分握らせる。

 「とぼけないでよ、ほらあ、フィロスのこと!」

 途端、テリはマンダリーニを口に入れながら幸せそうな顔になった。
 
 フィロスはこの町で一番の宝石商の次男でテリと「いい仲」だった。 

テリは厳格だとかそういうラトキア人の一般に言われている性格とは程遠く、楽観的で明るい子だったので街の男の子から人気だった。

 懐をまさぐるテリ。

 「それがね、こんなのもらっちゃった!」

 小さな窓から差し込む光にかざされ指輪が光る。
 
 イーリスはうわあ、と歓声を上げた。