獅子王とあやめ姫

 「おかみさん、真っ青な顔してたよ。訊いてもなんも答えてくれなかったけど。でも病気じゃ、ないと思うよ!」

 確かに皿洗いをする音が聞こえてくる。

 病に倒れているわけではなさそうだ。

 「本当に青い顔してたの?聞こえてたのかなあ、怒られちゃう。でもありがとうねアイアス。行こうテリ。」

 どこかぎこちない7才の報告を微笑ましく思いながら、イーリスはテリと共に食堂をあとにした。




 窓と小さな机、それに寝具だけの狭い部屋にテリを通した。
 
 窓際には今日アイアスが摘んできてくれた一輪の花と、テリが誕生日やらにくれた、小さな貝殻や耳飾りなどが僅かにおいてあった。

 寝具に並んで座り、マンダリーニの皮を剥く。
 
 イーリスは唐突に言った。
 「最近、どうよ?」