部屋の外で召し使いたちがパタパタと働く物音と共に、イーリスは目を覚ました。

 大きな白い寝台の天蓋が朝日を反射して光っている。

 ぐるりと豪奢な部屋を目線を一周させたあと、自分がどういう状況に置かれているかを思い出した。

 (そうだ私…お城で預かってもらうことになったんだ……王子さまのご厚意で。)

 あの優しくて如才ない王子を思いだす。

 イーリスの滞在をそのひげ面を歪め、あからさまに嫌がっていた教育係を上手く丸め込んでくれたのだ。
     
 __それに、母上のこと…気の毒だったな。

 その去り際にかけてくれた言葉の優しい響きと共に、辛い現実も突きつけられる。

 じわりと目頭が熱くなり、豪奢な部屋がぼやけてにじんだ。