大きな城門が門兵によって静かに閉められると、後ろに従えている侍女の一人がおずおずと口を開いた。

 「そろそろお戻りにならなければ…姫様に万が一何かございましたらわたくし共の首が飛びます。」

 侍女の言葉に、第一王女イゼルベラは整った口を尖らせる。

 「分かっているわよ。でも父上も冷たいわ。大事な息子を異国に向かわせておいて、お見送りもしないなんて。」

 兄を思って父の陰口を叩く王女を苦い顔で後ろからなだめる女が一人。

 「陛下もお忙しいのですよ。」

 ぎくっと振り向く王女と侍女。

 「トリーフィア!」

 刺繍の練習をこっそり抜け出したことがばれ、イゼルベラは肩をすくめた。