この音を聞きながらここで過ごすようになったのはいつからか。

空きコマの時間をつぶせる場所を探してキャンパスを歩いていたとき、偶然礼拝堂からオルガンの音が聞こえてきた。足を止め聞き入ってしまったのは、実家がピアノ教室の影響だろう。とても懐かしい音に聞こえた。

それからというもの、毎週この時間の空きコマは礼拝堂のとなりの広場で本を読んだり、昼寝をするようになった。



一度だけ弾いている人のことが気になり礼拝堂を覗いたことがある。薄暗く遠かったため顔は見れなかったが、長いストレートの黒髪と白いワンピースが印象的だった。音色と同じような優しい雰囲気のある女性だった。