「あ、慶!ほら、あの子来てるぞ」



あの子?



駿介が指差したのは女の子達の群れではなく、その少し離れたところにある小さな扉。



「あ…」



そこに立っていたのは、ポニーテールの女の子。


少しオドオドとした様子で中を覗いている。



「かーわいいよなー、あの子。同じ1年の子だろ?誰目当てで来てるんだろうな」



彼女はいつも控えめな場所にいて、絶対に女の子達の集団には入らない。


その様子を毎日見る度、彼女が気になって仕方なくなった。



「一年、そろそろ始めるぞー」



キャプテンの掛け声で練習が始まった。


練習の最初に円陣を組んでからランニングに入る。


列に並ぶ時にチラリと彼女を見た瞬間だった。



「!」



ばちっと目が合って、彼女が恥ずかしそうに下を見る。



ウソ。

マジで?



今、目が合ったよな…?