気づいたら、走り出してた。
体が勝手に、動いてた。
「翠っ…!!」
翔にぃの声にも振り返らずに、俺は家を飛び出した。
走って、走って。
走り疲れて、近くの公園のベンチに座った。
ここまで来れば、きっと誰も分からない。
… その前に、こんな俺のことなんて誰も追いかけてこないよね。
…もうこれで、本当に帰れなくなっちゃったな…。
ジワリと滲む涙をグイッと拭う。
高2にもなって、俺、すっげえダセェ…。
夜の冷たい風に吹かれているうちに、少し頭の中が落ち着いてきた。
叩かれたの、初めて。
きっと、翔にぃも弟を叩いたのも初めてだったと思う。
翔にぃは俺の言葉に怒ったんだ。
俺が、俺なんかって、言ったから。
分かってる。
翔にぃが俺たち弟のことを大切に思ってくれてるってことは。
自分でブラコンとか言っちゃうくらいだし。
だからきっと今頃、俺を叩いてしまったことを後悔してるはず。
翔にぃは悪くないのに。
俺が悪いのに。
翔にぃは、そういう人だから。



