進路調査票を提出したその日の昼休み、担任に呼び出された。
「進路のことなんだが…久遠、両親には相談したのか?」
両親…。
「…両親なんて、いないようなものですから」
仕事が忙しくてほとんど家にいないのだから、いないのと同じ。
「でもなぁ、お前これは…。兄貴には話したか?」
「言ってません」
「言ってない?お前一人で決めたのか?」
「はい、兄達は忙しいので。俺なんか相手にしてる暇はありませんから」
迷惑だけは、かけたくない。
だから、言わない。
「先生、俺今から整備委員の仕事があるので」
「おぉ、そうか。分かった」
先生に「失礼します」とだけ言って、職員室を出た。
もういいんだ。
俺は……。
頭の中に浮かんでくるのは、兄弟の笑顔。
けれどそこに、俺の姿はない。
俺は…必要ないんだから。
その瞬間、俺の心が真っ黒に染まった気がした。



