「あの…………。」
部屋では、北校ヤンキーズの一員と思われる数十人が楽しそうに屯(たむろ)していた。
……のだが、申し訳ないことに烏丸氏の登場で場の空気は固まったよね。
「誰だ……?」
「水南?……いや、カナ女のお姫様じゃんか。」
「総長の彼女か?カナ女の出禁解禁になったのかな。」
ざわめく室内。
灰音が私をカナ女からそのまま連れてきたこともあって、思いっきりカナ女だってバレてるしね。
なんかもう、どうとにもなれっていう感じだよね、うん。
いざとなったら、カナ女に憧れて制服改造した水南女子になり切ろうと思う。
「ちげーよ。灰音さんのミューズだって。」
ドアを半分位開け、こっそりと部屋の人に声を掛けた私。
正体不明の女の登場にざわつきはするものの返事をしてくれる人はいなかったのだけれども。
屯している男子の一人が、さっき灰音直々に私を紹介された人だったらしい。
騒動を鎮めてくれて、更には「どうかしました?」と声をかけてくれた。
「この子があの部屋に入ってきて……布とかあったから、危ないかなって思いまして……。」
「あ、チェーロさん。」
へぇ。
猫ちゃんの名前は、チェーロちゃんらしい。
イタリア語で“空”を意味する単語だよね。
真っ白で綺麗な青色の瞳を持つ、この子らしい名前だ。
「ありがとうございます。きっと灰音さん、仕事モードで我を失ってるだろうし、チェーロさんも布よく割くんで、事前に食い止められて良かったです。」
「ふふ、チェーロちゃん、見た目に似合わず悪戯っ子。」
腕の中で甘えるように体を擦り付けるチェーロを、連盟の彼に手渡す。
が────
「あは、チェーロさんに懐かれました?」
彼に手渡した瞬間、ピョンと飛び写って私の腕に戻ってくるのだ。
「くっ……。可愛すぎる……!」
「チェーロさん、人に懐くのレアなんすよ。凄いですね。」
チェーロちゃんが可愛すぎて悶えるよね。
懐くのレアなのに懐いてくれたとか、嬉しすぎるよね!
「でも……困りましたね。灰音先輩のところに戻らなきゃいけないでしょう?ミューズさん。」
「えと、烏丸です。」
ミューズさんはこそばしすぎて、即座に自己紹介。
そうすれば連盟の彼は「烏丸さん」と言い直す。
「ちょっと待ってて下さい。今総長連れてきます。」
「あ、はい。…………はい?」


