「冗談よ。ただ、貴方が適任だと思ったの。」
お姉ちゃんの冗談は冗談に聞こえないから困る。
まぁ、冗談はさておき、
「転校生が、来るってこと?」
私は驚いていた。
そもそも陰飛羽には転校生なんて制度があるのに驚いたし、これでも一応天下の聖カナン女学院。
此処にいる生徒は、皆かなりのお嬢様ばかり。
そんな特殊な学校に転校してくる転校生は、かなり特殊なんだろう。
そう言えば、お姉ちゃんは少し苦笑い。
転校制度はないわ、と言う。
「正確に言えば……謹慎明けね。もしくは停学。」
「キンシン…………。」
キンシンが、謹慎だと分かるのにかなりの時間を要した。
だって思うわけない。
お嬢様がまさかの半年謹慎だなんて……。
「いい子なのよ。……ちょっとお茶目なだけで。」
「そ、そうなんだ。」
お互い苦笑い。
そうなんだとしか私は反応出来なかった。
ちょっとお茶目で謹慎くらうって、どれくらいお茶目なんだろう……。
そう考えている間に、ノックの音が聞こえる。
「志乃。」
「どうぞお入り下さい。」
今日も爽やかな天音先輩に背中を押されて部屋に入ってきたのは例のお茶目な謹慎明け少女。
スラリとした白くて長い手足。
ショートカットの黒い髪を内巻きにし、
何処か緊張した面持ちでこちらを見据えているその子はまるで……
「白雪姫みたい……。」
10人いれば10人が可愛い!と言うであろう、かなりの美少女。
思わずそんな感想が口から出ちゃう位の可憐さだ。
さっきまでの警戒心が嘘みたいに消えていった。


