「烏丸初伊って、うちの学校には残念ながら1人しかいないんだけど。」
「うん、それで合ってるから。」
心の底からよく分からないけど、灰音は私を待っていて、私はミューズと呼ばれたらしい。
にしても……何の用だろう。
連盟の事?
それとも個人的な用事?
きっと、訝しげな顔をしていたんだろう私を見て灰音は「ああ、えっとね」と話始める。
事情を説明する気になったらしい。
「俺の、ミューズになってよ。」
「そういう勧誘はお断りしています。」
あっは。
説明されてる筈なのに、余計訳が分からなくなる。
待って、待ってよ灰音さん。
君は天真先輩を止める常識人だったはずでしょう!
真顔で首を振り、断れば。
「え?」と灰音は困惑した表情を見せる。
いや、「え?」じゃないよね。
逆にこっちが困惑だよね。
「初伊、シエル嫌いだったっけ……?」
「何が?!シエルってCIEL in London?シエルの服は大ファンですけど……」
「じゃあいいじゃん。行こ。」
「ああ、連行される!」
引きずられるようにしてやってきたのはお久しぶり北校連盟の本部。
とんでもない会合にうっかり混ざっちゃった事件を最後に、私は此処に来ていない。
当たり前だ、来る用事がないもん。
初めて出会った時と同じく、灰音は慣れた様子でドアを開けて。
その時とは違って、私を中に招きいれる。
「ただいまー。」
「灰音さん、聞いてくださいよ!また総長がご飯食べない!いい加減あの人死にますよ!」
「えー、適度に殴って強引に飲み込ませていいから。」
「あんた扱い雑だな!」
どうやら……北校はかなりアットホームらしい。
他校で感じる謎の圧力を感じない。
そして……
「うおっ……誰っすか。」
「俺のミューズ。」
「ああ、貴方が……。お疲れ様っす。」
結局ミューズって何?!
しかも状況把握してないの私だけ?!


