向こう側に。




「吃驚しただろー。バイト終わって外うろついてたら、いきなり集まるぞーって」


千堂がそう言って、"別に良いけどさー"と戯けて見せる。

優しいのね…気まぐれに付き合わされたのに。


「ごめん、ごめん。
咲と丁度話しててさー、呼ぶか!ってなったの」

悪びれも無く、おおらかに笑う愛海。

流石。色々、要約されている部分があるけど気にしないのね…。

本人はお構いなしにはははー!と、未だに笑んでいる。



「咲も久し振りだなー!元気してたか?」


愛海と話していた千堂が、ふと私に話を振る。
前から、いつもこう言う気付きがあった。


話に入れて無い人とかに、話を積極的に振る。

明るい人柄もあるのだろう。

だからかな。皆と仲が良くて、自然と輪の中心にいた。


「うん、全然元気だよ!ありがとう。」

そっかー。とニコッと千堂が歯を見せて笑う。

気まずさと言うべきか。

何故だか、話辛さみたいなそれに近いものを感じている。


この前の素っ気ない態度を、千堂は全く気にしてなんかいないのだろう。


そこに罪悪感があって。

優しい人に取るような態度じゃ無かったから。


「そうだ、咲!
千堂のケー番聞いておけば?こいつ便利だよー」

愛海の突然の提案に、千堂が一番吃驚している。

……私は全然良いけどさ、千堂は別にいらないでしょ。私の連絡先。


「便利って何だよー。
連絡先知ってて困る事はないけど…。」

そう言いながら、此方を見る。