「………え?」


帰る……?


なんでだ……?


一瀬……お前、あの家に帰りたくないんだろ…?


さっきこんなにおいしいご飯初めて食べたって…


泣いてたじゃないか…


「あのね…さっき親に電話したら心配してて…。帰ってこいって言われたんだ…」


嘘だ……。


あの親が言うわけない…。


お前が死にそうな時


気にもかけなかった親だぞ?


「やっぱり……こんな狭くて汚い部屋じゃ嫌か…?」

一瀬は蛇口を止めて、ゆっくり俺に近づいて言う。


「違うよ……先生。僕、狭くて汚いなんて全然思わないよ。僕んちと違ってあったかくて、生きてるって感じの部屋だと思うよ…。」 

一瀬の目をしっかりと見つめる。


一瀬は逸らさない。


嘘はない…今の言葉に。


「先生……帰る前に、話すね…。学校であったことを…。俊との…こと。」