老体にムチを打ちながら、必死に走るシロー。
目的地など無い。
ただ黒斗から逃れる為、デタラメに町を走っていた。
「ハッ……ハアッ、ハア……ゲホッ!」
まだ3分も走っていないというのに、シローは既に息が切れていた。
いくら自分では大丈夫だと、まだ若い、元気だと言い張っていても身体は正直だ。
やはり、寄る年波には勝てない。
「クソッ……ハッ、ハッ……」
体力に限界が来たシローは立ち止まり、汗を拭いながら呼吸を整える。
「ここは、繁華街(はんかがい)か……ハア……」
ふと、周囲を見渡し独り言を呟く。
(…………ん?)
自分が今いる場所に違和感を覚えるシロー。
(……おかしい)
繁華街そのものに異常は無い。
異常なのは“人”だ。
いつも沢山の人が行き交う賑やかな場所なのに、今は人っ子一人いない。
人の数が少ないならともかく、シロー以外に誰も居ないというのはあまりにも不自然だ。
まるで違う世界に迷いこんでしまったような不安を覚えるシロー。
「鬼ごっこは終わりか?」
「うわああああーっ!!」
背後から声が聞こえて、シローは弾かれたように走り出した。
「ハアッ、ハアッ…………クソ、あの化け物め!」
チラチラと背後を見ながら走るシロー。
(とにかく、隠れやすい場所に!)
走って逃げていては、いつか追いつかれる。
ましてやシローは若くない為に体力が低い。
だったら逃げ回るよりも身を潜めていた方が良いと考え、人目につかなそうな場所を探す。
(……おっ、アソコだ!)
店と店の間の薄暗い路地を見つけ、シローはそこへ入って行った。
(こ、ここなら簡単に見つかるまい……!)
路地裏に入り込んだシローは、ダンボールやら酒樽(さがだる)などの雑多の間に身を潜めた。
(……追ってきてはないな……)
全神経を研ぎ澄まして気配を探り、誰も近くに居ないことを確認してホッと溜め息を吐く。
身体中に流れていた汗が衣服に染みて、疲労した身体を冷やしていき、シローは身震いしながら身を丸めた。
(…………チクショウ…………何て惨めなんだ……)
汗で濡れた泥だらけなボロボロの衣服を身に纏い、死神に怯えて路地裏で1人息を潜める。
(今まで頑張ってきた報酬がホームレスで、最後には殺される? ふざけた話だぜ!)
過去の栄光を思い返すシロー。
