でも、たまに過去に縋り付きたくなる。


忘れて吹っ切れたはずなのに、記憶とゆうのは厄介だ……。



「珀疾さん‼︎話聞いてます〜⁉︎」

「え、あー……おう。聞いてる」

「絶対聞いてなかったもん‼︎」


放課後のオレンジ色に染まる道。


ぷくっと頬を膨らませて怒る杏菜に少しの罪悪感。


隣にいるのは杏菜なのにな……。


「杏菜……キスしたい」

「キ、キス⁉︎ここ外ですよ⁉︎」

「良いじゃん。人いねぇし」

「もし誰か人でも通ったら……」

「口閉じて黙って。それとも、深い方が良いの?」


勢い良く首を横に振って目を閉じた。


可愛いヤツ……。


唇が離れた瞬間、杏菜を見るとすげー顔真っ赤で。


「この先が思いやられんな……」

「多分、無理です…。恥ずかしくて倒れる〜…」

「俺も無理。我慢の限界とっくに超えてっから」

「じ、じゃあ…あたし頑張ります…」


潤んだ瞳で俺を見上げて、指をきゅっと握られる。


さすがに外で押し倒すのはな……。


ピンクの唇にそっとキスをするだけで我慢した俺偉い。



杏菜が側にいてくれる。


それだけで俺は幸せだ。