埃っぽい空き教室に連れて行かれ、椅子に優しく降ろされた。
「ありがとうございます…」
「いーえ。で?追っかけられてる理由は?」
話す事も怖い。
指先が震える中、つい2週間程前の出来事を思い起こす。
運悪くお弁当を忘れたあたしは、昼休みに購買へ行った。
メロンパンを買って教室に戻る途中、初めて校内トップに出くわした。
茶髪の長めの髪、着崩した制服。
とにかくチャラい。
『ねぇ、お前可愛い顔してんな』
『…っ⁉︎』
『へぇ〜…1年か。名前は?』
『東雲…杏菜、です…』
きっと、ブレザーに付けてる学年別のバッチの色で分かったんだ…。
噂で聞いてた通り………
女の子には、だらしない。
『すっげぇ可愛い。俺の女にしてぇ』
『ひっ、う…ご、ごめんなさい‼︎』
その場から走って逃げた。
それから目を付けられてしまった。
追い掛けられる日々。
「もう、うんざりです…」
「そりゃ災難だな。まぁ、ちょーど良いや。俺も柊なんて嫌いだし」
「同じ学年じゃないんですか?」
そう聞くと彼は、ぶはっと大きく笑った。

