【杏菜side】



家の玄関にある全身鏡。


今日のために買ったピンクのシフォンスカートの裾をきゅっと握る。



化粧も大丈夫だよね⁉︎


髪も不慣れだけど、キレイに巻けてる⁉︎


調子に乗っていつもの数百倍オシャレを頑張った。


珀疾さんに可愛いとこ見てほしいもん……。



駅前に着いたのは、余裕を持った待ち合わせ5分前。


なのに……珀疾さん来てる⁉︎


履き慣れない踵の高い白のサンダル。


小走りでさえ、大変……。



「珀疾さん‼︎」

「杏菜。…ははっ‼︎」

「うっ、へっ⁉︎なんで笑うんですかっ⁉︎」

「いや、歩き方危なっかし過ぎ‼︎」

「そ、それは〜………」


普段こんな踵の高いの履かないもん‼︎


調子に乗った罰ですか……。


「背伸びする事ねぇのに。けど……」

「えっ?」

「…すげぇ可愛いよ。でも、危ねぇから手繋ぐ」

「は、はいっ…」


ぎゅっと初めて握られた右手。


夏の蒸し暑い炎天下で汗かいてるのに、もっと暑くなるぅ〜……。


手を繋ぐだけで、こんなにドキドキしちゃうんだね…。