【珀疾side】
寒い季節から桜が舞う春に移り変わった約半年後。
俺は相変わらず、バイト三昧の大学2年生。
杏菜は美専に進学して、一人暮らしとバイトを始めた。
お互い忙しくなって、もっと会える時間は減ったけど……。
俺は杏菜のアパートの合鍵持ってるし。
会いたい時は、いつでも会いに行ける。
そして、今日は久しぶりに杏菜のアパートに来た。
白を基調とした案外シンプルな部屋。
「あたしがいなくても来てて良いのに。合鍵あるんだし‼︎」
「嫌なんだよ…。すげー見詰められてる感じする…」
「あははっ‼︎慣れるまで怖いよね〜。マネキン‼︎」
美容師専攻の杏菜の部屋にある大量のマネキン。
あの頭だけのやつ。
めちゃくちゃ怖いんですけど‼︎
「もし、あたしと同棲したらずっとマネキン生活だよ?」
「無理。絶対慣れないから、マネキン専用ルーム作る‼︎」
「そこまで⁉︎珀疾さんの弱味ゲット〜♪」
「喜ぶな、アホ……」
可愛いから文句言えないんだけどな…。
杏菜の笑顔に弱いんだ、俺。