案の定、俺の大事な杏菜がいじけた。


今日から世話になるバーのバイト専用ルームで、スマホ片手にヘコヘコする俺。


「マジでごめんって…」

『どうして急にバイト?何か言ってくれても良かったのにっ』

「急に決まったんだよ。友達の…ゴリ押し的な?」

『疑問形腹立ちます。嫌いです』


電話口から聞こえる可愛い声。


めちゃくちゃ怒ってる……。


「夏休みデートしてやるから」

『…本当に?』

「嘘つかねぇよ。だから、お前も受験勉強頑張れ」

『珀疾さん、ごめんなさい。やっぱり、大好きです…』

「それでよし。じゃ、俺バイトだから」

『はい‼︎頑張って下さいねっ‼︎』


ご立腹だった杏菜ちゃん。


夏休みデートで、コロっと機嫌直してくれた。


約束した分、稼ぎまくってやる。



「彼女の機嫌取り終わったか〜?」

「げっ‼︎涼さん‼︎」

「聞かなかったフリしてやるから、佑大とホール出てオーダー取って来い」


苦笑気味に背中を押されて、ホールに出た。


佑大すげー人気じゃん…。


奥様方に絡まれ過ぎだろ‼︎