なんで好きなヤツ泣かせてんだよ。
俺って本気で最低じゃん……。
もうどうでも良くなって、傘も無いまま校舎の外に出た。
雨の冷たささえ分からない。
雨に打たれて駅に向かうと、頭上で急に雨が止んだ。
視界の隙間に入るのは、ピンクの傘。
もしかして杏菜…?
振り向くと、一気に現実に連れ戻された。
「…絵梨さん」
「何してるの〜。風邪引いちゃうよ?」
「傘忘れちゃって……」
「バカ。今、学生は授業中でしょ‼︎サボっちゃダメよ?」
優しく微笑んだ絵梨さんは、駅のホームへと俺を連れてった。
毎日、駅のホームで会ってた事が懐かしい。
「よく駅のホームでお喋りしてたねっ。覚えてる〜?」
「覚えてるよ。ちゃんと」
「冬とか寒かったよね。あの頃の珀疾、可愛かったなぁ〜」
俺が絵梨さんにマフラー貸してやった事だろ?
思い出す自分にも嫌気。
いっその事、絵梨さんとの思い出が全部消えてくれれば良いのに。