優しい先輩はとんでもない不良でした




細い手首に着けた華奢な時計。


ふっとそれを確認して困った顔。


「ごめん、珀疾‼︎せっかく久しぶりに会えたのに…もう行かなきゃ‼︎」

「あ…俺こそ呼び止めてごめん。大学?」

「いいえ。……彼との待ち合わせなの。ごめんね?」

「謝んなよ。またな」


軽く手を振って、絵梨さんは人混みに消えてった。



俺から絵梨さんを簡単に奪った男。


絵梨さんの婚約者。



『本当にごめんね…珀疾…。婚約者の彼と付き合う事になったの…。今まで、ありがとう。楽しかったわ』



桜がヒラヒラ舞う中で、絵梨さんは俺から離れた。


手からスルリと何かが落ちた感覚。


そうだよな。


絵梨さんから見たら、年下の俺なんて所詮ガキ。



悔しくて惨めで情けなくて。


ただ、ひたすら暴れまくった高1の春。


自暴自棄。



ダメだ………。


もう絵梨さんとの事は忘れろ。



煮え切らないまま家に帰った。


久しぶりに開いた中学の卒アルは、誰か別なヤツが見た形跡アリ。


ごめんな、杏菜………。