すげー暗い顔した杏菜と手を繋いで来たマンション。
夕方の5時半。
門限前だし、お父さん帰って来てんのかな……。
「杏菜。行くぞ」
「ヤダ…。帰りたくないよぉ…っ」
「泣くなって〜…。俺、ちゃんと側にいるから…」
「う、うんっ…」
恐る恐る鍵を開けると、すぐに杏菜の両親が飛んで来た。
そして有無を言わずに、父親の手が杏菜に振りかぶる………
パシッ––––––––
俺は咄嗟に父親の手を掴んだ。
「またお前かっ…手を離せ‼︎」
「話も聞かないで叩くのはナシじゃないですかね?」
「珀疾さん…っ、ありがとう…」
話ぐらい………
杏菜の言い訳ぐらい聞いてやってくれよ。
「ありがとう…。あたしちゃんと話す…」
「おう。逃げたくなったら電話でもしろよ」
「はいっ。でも……逃げないで頑張る」
「それでこそ、俺の彼女」
母親と家に入った杏菜を見送って、1人で家に帰った。
いつか、杏菜の父親に最高の男だ‼︎って認めさせてやる。