優しい先輩はとんでもない不良でした




そんな俺の口から出た言葉。


自分から「好き」と伝えたクセに、なんて無責任なんだろう。


「杏菜が悲しい思いすんなら別れる」

「…へっ?い、今なんて…」

「俺は杏菜の笑顔が好きだ。だから、俺が原因で泣いてるのは見てらんねぇ」

「嫌だ…。もう泣かない‼︎泣かないからぁ…‼︎」


顔を上げた瞬間、涙で濡れた目が俺を見詰める。


これ以上、俺といて泣かせたくない…。


「あたし…珀疾さんの側にいたいっ…」

「俺もいたいよ…。けど、少し距離取った方が良いっつーか……」

「…そこまで言うなら……でも、あたし…。珀疾さんのこと…大好きっ」

「おう…」


俺の腕からスルリと抜けた幸せ。


大好きな人。


キレイな黒髪を靡かせて、走って美術室を出て行く。



「俺だって大好きだよ…」



離したくねぇのにな。


なんて、後悔したってもう遅いんだ。



慌てて美術室に入って来た和泉。


心配そうな表情で俺の顔を覗き込んだ。


「今、杏菜とすれ違って…。アイツすげー泣いてたけど…」

「それ、俺のせい」


ごめん、なんて言葉じゃ足りない。