「さっきより顔色が悪いぞ。」
といいながら、先生は私に近づいてくる。
先生の手が私の顔の前にきたところ、
ビクッ
私は、全身に鳥肌か立つのを感じ、その場にしゃがみこんでしまった。
怖い。
突然、自分の体を触られると思うと、怖くて仕方がない。
誰にも助けてもらえず、ただただ痛みに耐え、それは、毎晩繰り返される。
ハッとして、顔を上げると、眉間にシワを寄せて困った顔で私を見下ろす先生。
「すいません。」
と立ち上がると、頭が重く、痛みが走る。
でも我慢しよう。
再検査が必要と言われてこんなに時間がかかって、頭痛を知られてしまったら、また診察されてしまう。
早く帰らないと。
なんて、先生に頭痛がばれないように下を見ていると、
「診察結果が出たから、椅子に座って。」
と先生に言われた。
私が椅子に座ると、先生は何か用紙を見ながら、
「君は、喘息が幼いころからあったのかな?」
と尋ねられた。
私、ぜんそく?
ぜんそくって?呼吸がどうかなっちゃう病気だったっけ。
「ないと思います。」
と自信なく、私が答えた。
すると先生は、
「最近、呼吸が苦しくなることは?」
と尋ねる。
全くない。
「ありません。」
「体育や部活をしてる時にも?」
と先生の言葉に、
「部活は、ソフトボールをしていますが、全くありません。部活の中で、ダッシュを何本もして息が上がることはありすが。」
と答えた。
先生は、私の返事に困ってしまったのか、眉間にシワを寄せている。
「今回の検査で分かったことは、君が喘息であることと、その喘息は、君が感じているよりもとても重い症状が出ているということ。
検査で測ったピークフローは、通常喘息のある人に比べてとても低い。
今までの生活をしていると、かならず発作を起こして倒れる危険がある。
君の普段のピークフローやこれからの生活改善のために、今日から入院してもらう。
ご家族の方の連絡先は?」
と次から次へと説明され、私は、頭の痛みに必死に耐えながら、先生に聞かれた言葉だけ答えた。
「家族はいません。
施設で生活しています。」
と答えると、
「じゃあ、施設の代表の方にこちらから電話をするので、これから看護師に入院の説明を受けてもらう。」
えっ?
なに?どういうこと?
家族がいないという質問から、入院!?
頭痛を我慢するのに必死で、あまり先生の話を聞いていなかった。
私の頭の中がパニックになっている時、先生は
看護師さんに電話をするよう伝えていた。
そんな、施設長に電話がいったら、こんな面倒くさいことをさせてと、またひどいことされる。
お願いだから、電話しないで。
と心の中で、叫ぶと同時に、私は、診察室を飛びだし勢いよく走っていた。
廊下を出て、一階につながる階段をおりる。
遠くから、走るなって怒鳴ってる?
でも、帰らなきゃ。
と、次の瞬間、私の目の前に床が見えると同時に鈍い音がなり、頭に強い衝撃が走った。



