優季は台所に行き、そこに置いてあったサラダの皿を持ってきた。


緑、赤、オレンジ。色鮮やかなサラダは食欲をそそる。


「……お前、泣いてたのか?」


「いや、…まぁ。うん」


「大丈夫なのかよ」


「……………うん」


……なんか、変な感じ。いつもの優季じゃないみたい。


まぁ思う節はありまくりだけど。


別に責めるつもりもないし、恨んでもないし。


あたしは何もそれに関して言わない。


「……あと、5分ぐらいで出来る。なんか、飲むか?」


「ん。温かいヤツ飲みたい」


「了解」


彼はまた台所に戻る。


コーヒー?意外とカフェオレだったりして。もしかしたら、紅茶?ミルクティー?


出てくる飲み物の想像をしていると、出てきたのは。



「キャラメルミルク?」



「あぁキャラメルミルク」


意外なキャラメルミルクだった。


「ありがと」


「あぁ」


受け取ったキャラメルミルクは、温かった。


「優季」


「…………泣くとは思わなかった」


「え。何?せっかく、その話避けてたのに。切り出しちゃうんだね」


「………………」


無視かーい。


いーよいーよ。美沙ちゃん、優しいから許してあげるし。


ふぅふぅと、マグカップに息を吹き掛ける。


キャラメルミルクは、小さな波の波紋を作って広がって消えて、また作る。


湯気は、ゆらりゆらり激しく揺れる。



「……あたしね、あれから初めてプレゼント貰ったの」



お父さんが死んだあの日から初めて、だ。



「優季は、…ってゆーか、優季の家族みんな、あたしの誕生日にはプレゼントくれなかったよね。もちろん、気を使ってくれているってことくらい分かってたよ」



ずっと、あたしの最後に貰った誕生日プレゼントは、お父さんが買ってきた血まみれの千切れたぬいぐるみ。


あたしの日常を非日常に変えた、あのぬいぐるみ。