体が飛躍的に回復した又四郎。



おそらく死闘を幾つも重ねて、怪我を何度も繰り返していくうちに、その恐るべき回復力に繋がっていったのだろう。



リハビリルームで、黙々と体作りに励んでいた。



カナが決まって、リハビリに付き合っていた。



「ほら、しっかり立って。大丈夫?歩ける?」



「ふう。カナ殿もう大丈夫だ。腰に少し痛みが残ったが、杖無しでも歩ける。」


杖を置き歩き出す。


ふと、揺らめいて倒れそうに成った。


「あ!危ない!」


カナが又四郎を支えようと体を抱く。



「うわっ!」



カナは又四郎を支えきれず、二人は転倒する。



又四郎はカナをかばうように抱き抱えて床に倒れた。



「あ、危なかった・・・。」



又四郎はカナを起こそうとしたが、腕と腰にズキンと痛みが走った。



「うぐぐっ・・・。」



そのままカナを抱き締めるように床に倒れ、起き上がれない。



「すまん、カナ殿。寝ていたせいか、どうやら肉体が弱ってしまったようだ・・・。」



「ま、又四郎君・・・。あの・・・。手が・・・。」



「ん?な、なんだ?」



又四郎は不意に、カナの体を支えようと腰に手を伸ばした。


伸ばしたまでは良かったのだが、カナが履いていたローライズジーンズのベルトを掴み損ない、思いっきりズボンの中に手を差し込んでいたのだった。



軟らかな、そして温かい感触が又四郎の手に伝わる。



思わず握ってみる。



「あっ・・・。」



又四郎の耳元に、微かに吐息と共に甘い声が聞こえて、又四郎は我に返った。



「うがっ!す、済まぬカナ殿!!わざとではない!つい、と言う奴だ!
そう、ウッカリだ!面目無い!」



「・・・。又四郎くん・・・。わかったから手をどかして・・・。あの・・・。恥ずかしいから・・・。」



「お、おう。」



すぐさま手を抜こうとするが、又四郎は慌てていた。


しかもスキニージーンズの為、中々手が抜けない。



カナのお尻の下の頬っぺたを、何度も触らざるおえなかった。



「くっ・・・。ぬ、抜けない・・・。」



その都度、又四郎の耳元に艶かしい声と吐息が掛かり、ますます又四郎は慌てる。




ようやく手が抜けて、カナを抱き起こすと、二人は沈黙のまま顔を下に向けて、真っ赤なままうつむいていた。



「す、済まぬ・・・。」


又四郎が肺から声を絞り出すように言う。



「・・・。う、うん・・・。だ、大丈夫だから・・・。」




脱兎の如くカナは走り出し、リハビリルームから出ていった。



ち、超ハズカシイ!!


カナは恥ずかしさの余り又四郎に会わせる顔がない。



リハビリルームのドアから出て、廊下にヘタリ込む。



「あ〜っ・・・。」



まだ、お尻には又四郎の手の感覚が残っていた。


「もう・・・。又四郎君の・・・。」





取り残されたように呆然と立っていた又四郎の手にも、あの素晴らしい感覚が残っていた。



「う、マズイ・・・。」


ふと、前屈みに伏せた又四郎。



「こ、これは・・・。吉原でも行かねば・・・。」




間も無く、夏休みが終わり、2学期が始まろうとしていた。




青春が爆発する2学期が、目の前まで来ていた。