近藤は焦っていた。


早速手紙を読むと、有り得ない内容が書かれていた。



−昨夜、高柳を平賀が殺害。平賀の妹を人質に、平賀の自殺で幕引きの予定。
しかし、平賀は死なずに妹の救出に来たため、妹と一緒に監禁した。
今夜、自殺に見せ掛けて殺す。
高柳襲撃の関係者全員○○倉庫跡地に来る事。
来ない場合、当方然るべき方法を取ると思われたし。
時間は深夜2時。

この手紙は全員が読んだ後、必ず燃やして破棄する事。

重々、お忘れ無いよう。

○○組幹部・澤部広重−



と、書かれていた。



元より、こんな手紙は存在せず、実際こんな足の付く方法は取らない。


しかし、受験生には抜群に効いた。



沖田の作った手紙を読んだ近藤は、ガタガタ震えた・・・。



大至急、土方、斎藤、永倉の3人を集め、顧問の芹沢に相談に行った。




社会科準備室に居た芹沢に、この手紙を見せる。


「ま、まさか・・・。こ、こんな事になってしまうとは・・・。」


芹沢は驚愕した。


「生徒を自殺に追い込んで、その生徒が他人を殺めた事にしてしまうとは・・・。」


「もはや、障害事件の首謀者では済まされない・・・。我々も共犯にするつもりだ・・・。喋ったり、何かして下手をしたら、あのヤクザ達に我々も殺されてしまうぞ・・・。」


芹沢は動揺を隠せない。


近藤達はうつ向いたまま、何も言わない。



全員が本当のヤクザの恐ろしさを今更ながら知った。




「師範・・・。どうしますか・・・。」


近藤が恐る恐る聞く。



「行くに決まっているだろう!あわよくば、平賀の命は助けてもらわなければ。」


芹沢は大声で怒鳴った。




全員が、世界の終わりの顔をしたまま、表では終わり行く夏を偲ぶような、強烈な蝉の鳴き声が響いていた。