「ったく!警官が20人だぞ、20人!!しかも皆、剣道、柔道、護身術の有段者ばかりだ!
それをお前は全員気絶するまでぶっ飛ばしやがって!!前代未聞だよ!!」


刑事は頭に包帯を巻き、腕を吊り下げ、又四郎に毒づいた。


「お前が気絶させたヤクザなぁ〜、この界隈じゃ有名な武闘派組織のケンカ家だぞ。
可哀想に肩の骨が複雑骨折で、二度とケンカ出来ない体に成っちまったとよ!」


又四郎は目を閉じ聴いている。


「大体、木刀を振る前の蹴りでなんであんなに吹っ飛ぶんだ!おかしいだろう?」


又四郎はゆっくり口を開く。


「あの程度の蹴り・・・。ワシが本気なら、肩を吹き飛ばして居た所だ。」


「そう言う意味じゃねえんだよバカ野郎!!格闘家でも、あんな蹴り出せる奴はそうは居ないんだよ!!」


「全く、話になら無い。」


刑事と又四郎が一緒に言う。


刑事は呆れた・・・。



「まあ、いいや。お前、年齢は?」


「人に物を聞くのに何なんださっきから・・・。キサマ殺すぞ!」

又四郎はギラギラと刑事に睨みを効かせる。


刑事は一瞬焦る。
だが、気を取り直して又四郎を怒鳴る。

「バカ野郎!取調室で警察を脅してんじゃねえ!」



その捕り物は壮絶だった。


警察史に残る大捕物だった。


ヤクザに重傷を負わせ、ボンネットに乗っている又四郎を、二人の警官が取り押さえようと近付いたが、瞬殺される。

怪我が軽い方の警官がパトカーに這って行き、無線で応援を呼ぶ。

その連絡を受けた警官が6名現場に駆け付けて来る。


いずれも腕に覚えのある警官が、木刀を持って車の上に居る又四郎の事を、取り押さえようと囲む。


又四郎は素早く一人の腹部に当て身を食らわし、回し蹴りを近くの二人に当てる。
木刀を真横に振り、さらに二人をなぎ払い、一人に痛烈な一撃を肩に食らわす。


その攻撃で、6人の警官が倒れる。

更に警官12人が駆け付けて来る。

又しても雷撃のように又四郎は12人を打ち倒す。


その動きに危機感を覚えた警察は狙撃部隊を要請。


麻酔弾を又四郎に命中させて、ようやく捕まえる事が出来た。

麻酔弾約50発を消費して。


又四郎は、その殆どの弾を弾いた。


狙撃部隊も、人が多い中、逃げ回り、何故か弾道を読んでくる又四郎を追い詰める事が難しかった。


「大体こんなガキに、狙撃部隊なんて大袈裟な・・・。麻酔弾50発だぞ!高いんだぞ、あれ!税金なんだよ!!ったく!」

刑事は苛立つ。

「で、年齢は!!」


又四郎は睨む。


「ガキではない!齢三十七!!」


「何が37歳だ!!おめぇが俺と同じ歳の訳がネエだろう!!」



改めてマジマジとマジックミラーに映る自分の姿を見たとき、確かに若すぎる又四郎。


剣豪と死闘を繰り広げていた時、心身共に充実した三十七歳であった。


しかし、何故か、どういう訳か、十五才程に若返り、時空を越えて現代に突如飛ばされた。


「ううむ・・・。珍妙な・・・。」


又四郎は一人、呟いた。