剣道部は変わらず活動していた。


三年レギュラー陣は、陰謀をおくびにも出さず、稽古に励む。


遙は遠慮気味である。


この日、又四郎は終始眠っていた。


誰が声を掛けても起きない又四郎は、放課後になっても眠っていた。


遙とカナは無理やり起こそうとしたが、起きないので、ひとまず部活が終わってから又四郎を迎えに来ようと、部活へ行った。




「遙君。先週の同級生は今日は来ないのかい?」

近藤は面を着けようとしている遙に声を掛ける。

「ええ。多分今日は来ないと思います。」


遙は申し訳無さそうに答える。



「そうか、あの剣道をもう一度見たかったのだがな・・・。」


「遙君。参考までに聞きたいのだが、彼は普段どんな練習をしているのだね?」


「あ、又四郎は毎日朝と夜に公園と神社で素振りをしています。」


「ほほう、毎日。朝が公園で、夜は神社で?」


「そうですね。毎日欠かさずにやっています。」

「それは関心だな。彼のようなすごい剣士が、剣道部に入ってくれれば良いのだが・・・。」


「・・・。そ、そうですね・・・。でも無理じゃないかなぁ〜・・・。」

「ははは。我々の事は気にしなくても良いんだ、遙君。来年に備えて考えておいてくれたら。」



そう言って、遙のもとを後にする近藤。


口元に卑屈な笑みを浮かべていた。





「コーラとコーヒーは、もう要らぬ!!」



ガタン!



体が、ビクンとなって又四郎は目を覚ました。


寝汗をかいていた。



「くっ。なんとも不快な夢だった・・・。」



机から起き上がり、周りを見渡すと夕焼けが教室に差し込んでいた。


静まり返った教室に、ふと我に還った又四郎。


「がっ!しまった!皆帰っておるではないか!!いささか、昨晩の疲れが出て、眠り呆けてしまったか。」



慌てて立ち上がり、剣道部の部室へ向かう又四郎。



「ううむ。一人で帰れないのが非常に不便だな・・・。」



剣道部の練習は続いていた。


道場内に遙の存在を確認し、水道へ行き水を飲む。


部活動が行われている校庭を見渡し、ふと、野球部の練習に目が止まる。


「そうだな、今日はあれをやってみるか。」


又四郎は野球部へ向けて、歩き始めた。