あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―


「おい白木……上村……授業中に俺の前で堂々とイチャコラするんじゃない‼」
「え?」
「は?」


わなわなと唇を震わせてしぼりだした声は唇と同じように震えていて泣いているというよりも怒っているように聞こえた。

それだけでも何だか意味も無く怖いのに、なおかつ目には朱と秀俊に向けた殺気めいた物が宿っている。はて、私達は何かこの男の怒りを買うようなことをしてしまったのだろうか?


「いいか!?この間おっちゃんはな!五年も付き合ってた彼女に振られたんだよ‼しかもっ何て言われて別れたと思う?『なんか……パッとしないんだよね和也(かずや)って』だぞ!?なんだよパッて、パッてよオォオ!イケメンじゃあ無いってことくらい前から知ってんだよ?なのにっなのにぃぃわざわざ人の心の傷をえぐるような事言って別れやがってぇェエェ!おじさんもう三十五だよ?もうほとんど出会い無いんですけどぉぉぁお!?」