あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―



「……これはっ的場先輩に相談だ!」
「何で的場先輩なんだよ!」


泣きじゃくる梨乃を目の前にどうして良いか分からず手を意味もなく無造作にあたふたさせる秀俊だったが、頭は冷静だったようだ。

行動に焦りがあっても声に焦りが見られない。イヤ、まぁちょっとは焦っていたからかもしれないけれど、語尾は八つ当たり調になってしまっていた。


「え?いや、頼れる先輩イコール的場先輩‼イコール的場先輩なら助けてくれる‼……的な公式が頭に……」
「どんな公式だよ、誰が考えたんだ、いつできたんだ、そんなの」
「私が的場先輩と知り合ってからしばらくしていつの間にか頭の中に存在しておりました」