あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―


そう。今はちょうど二時限目が終わりチャイムが鳴って先生が教室から出て行き、教室が無法地帯と化した時だった。確かに早いと言われれば早いような気もしなくも無いが、別におかしくは無い時間帯だろう。


「なになに?デート?熱いなー」


この圧倒的に彼氏が彼女にいじられる立場にあるカップルを見てはたして“熱い”なんて言葉が当てはまるのかは謎だが、見る人によってはそう見えるらしい。少くとも、朱の親友の梨乃には。


「梨乃っ梨乃こそ先輩とデートしないの?」
「は?梨乃って彼氏いたのかよ、しかも先輩に」


心底驚いたと言わんばかりに言葉の頭の部分で素っ頓狂な声をあげてしまった秀俊を見るとどうやら本気で梨乃に彼氏がいたことに対して驚いたようだ。