あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―



頭をさわさわと撫でる手が心地良い。朱は、猫のように気持ち良さそうに目を細める。すると顔を覗きこんできた秀俊の何かを決意したような瞳とかち合った。
……なんて力強い目をしているんだろう。
朱は、秀俊のこの目が好きだ。自分が弱気になっているときやどうしても勇気が出ないとき、心細くて、どうしようもない不安に駆られたときにこの目を見ると自分が強くなれたような気になる。とても心地いい何かに包まれているような錯覚に陥(おちい)るのだ。


『俺、バスケでお前を繋ぎ止めてみせるから』


驚きで細めていた目が大きくなる。


『お前が好きだって言ってくれたバスケやってるときの俺を精一杯お前の、朱のために』