あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―

えてしまったのは、何だか急に心のどこかに隙間が出来たように感じたからだ。こう考えると妙にしっくり来る。そうだ、そうに違いない。


「……」


風が吹いている。その風にのせられ、吹奏楽部が奏でる音楽やこのくそ暑い日に精一杯声を出しながら活動をしている運動部の声が聞こえる。
土曜だって言うのによくやるな……と、皮肉めいた言葉を頭の中で思い浮かべて、かき消した。自分だってかつてはそっち側だっただろう。

再び風が吹く。先程と同じように聞こえてきた音達。しかしその音の中には、明らかに先程とは違う別種の音が混じっていた。
その音に自然と体が動き、吸い寄せられていく。無意識の内に勝手に。

秀俊は、己の行動を制御出来ないまま敷地内へと足を踏み入れた。