あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―



朱と美紀は、二人揃って首を傾げた。そもそも朱と秀俊の恋仲が美紀に知られたのには理由がある。

朱と秀俊が付き合い始めたのは、高校一年生の冬の時季。なかなか進展の無かった二人がやっとの想いで手を繋いで一緒に帰っているところを買い物帰りだった美紀にたまたま見られたのだ。秀俊からしてみれば、彼女と初めて手を繋いで幸せな気分に浸っていたのに、いきなり現れた母親の存在を認めた瞬間ドン底へと叩き落とされた気分になったことだろう……と後に美紀は語る。

見つかってしまった後は、予想通り美紀からの質問攻めだ。

元々少しだけ人見知り気質だった朱は、初対面の美紀から様々な事を聞き出されオドオドしていたが、美紀の男勝りな口調や特有のフレンドリーさにどんどん緊張が解れていき、自分の趣味や好きなスポーツ、好きな音楽等を話していく内にとても気が合う事が判明。そこから仲良くなった……ということになる。