あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―

そんな秀俊の様子についに耐えきれなくなったのか、美紀が吹き出したように腹を抱えて笑い出した。


「あっはははは!」
「美紀さんっそんな笑ったら……ぷふぅっ」


二人の笑い声に弾かれるように顔を上げた秀俊は、もはや顔が真っ赤な事何て気にせずにキッと覇気の無い顔で睨み付ける。が、しかし。暖簾(のれん)に腕押し糠(ぬか)に釘、と言った調子でまったく効きやしない。


「お前らっこの!」


バッと勢い良く立ち上がった秀俊だったが、赤くなった顔とどうしょうもない恥ずかしさから逃れたい一心だけで立ち上がったため、特に何をするなど考えてもいなかった。