「……アイツは、泣いてましたか」 慧の瞳から逃れたくて言ったわけではない。自然と口から息を吐くように出てきた言葉だった。 三秒ほど秀俊の顔を見つめた慧は、また朱達の方向を眺めはじめる。 「……顔は見えなかったわ。でもね、声が震えていたの」 肩を揺さぶったり一方的にブルドックをしたりして、梨乃を起こそうとするがまだダメらしい。慧とのことがよほど衝撃的だったようだ。