あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―

「ちょっとー？何変な話してんの～？」
「お袋……」


ゲッ……とでも言うような顔をして秀俊は、ノックも無しに開いたドアの隙間に居る人物を心底嫌そうに見やる。


「あ、美紀さん」
「ごめんねー秀俊が乱暴者で、大変でしょ？」
「え！？何俺って乱暴なの！？」


実の母親にからかわれていると分かっていても、そんな涙も無い事を言われて軽くショックを受けた様だ、少し秀俊の周りの空気が重くなる。


「安心しなよ嘘だから」
「そうだよ、何ショック受けてんだよ～マザコンかぁ？」


じゃっかん男勝りな口調でからからとさわやかに笑う美紀は、何を思ってか更に秀俊をからかい始めた。