「……食べないの?」

マリンが聞く。

「オレ達いると食べにくい?帰ろうか?」

ダイゴが気を利かす。


「ううん…いいよ。そんなの気にしないで」


イチオー箸を持つ。でも、手が伸びねぇ。


「…ほらっ、食えって!」


付いてたスプーンでラムネを口の中に放り込んでやった。


「…ソウヤ!」
「ダメじゃん!」


二人が慌てる。
ラムネを口に入れられた方は驚いて目を丸くしてた。

その顔が緩んでく。
口の中で溶けたラムネのように、唇が笑った。


「…オイシー」


幸せそうな顔になる。


「ほら見ろ!味のあるもんは何でもウメェんだよ!」


床に落ちてたラムネ拾って、ゴミ箱に捨てる。
そのままドア開けた。


「…オレ、ロビーにいるわ」


病室はニガテ。息が詰まるから。

返事持たずにドア閉める。
さっきの笑顔見れただけでもう満足。用はねぇ。



ロビーに向かって歩き出す。階段の隅っこに自販機。
何か飲んでようかと目を向けた。



……アイツのママがいる。
自販機の陰に隠れるようにして立ってる。
手にしたハンカチ。
その表面が濡れてる。


(……泣いてんのか?)


訳は分からない。
ただ、無性にイヤな予感がしたーーーーー