いつものテンションを取り戻した私はふと視線を感じたような気がして顔を上げた。

乃愛を通り越しその後ろに視線を留めると――

そこにいるのは相変わらず誰とも馴れ合おうとしない由良だった。

漆黒の髪で隠された顔からはやっぱり彼の表情が分からない。

顔の向きからしてこっちを見ているような気がしないでもないけど

もしかしたら、俯いているのかもしれない。

観察するようにじっと見ていると、彼の顔が僅かに上がった。

それは観察していたから分かったことでもしそうじゃなかったら絶対に気付けないくらいの動き。

彼が僅かに顔を上げたことで、ここから口元が確認できた。

薄い唇の右側が微かに上がっていて

……笑ってる?

私には彼が笑っているように見えた。

だけど、それはほんの一瞬のことで瞬きをしてもう一度彼を見た時には、その唇は一文字に結ばれていた。

だから、それは私の見間違いだったのかもしれない。

「姫花?」

「え?」

「どうしたの?」

「……ううん、なんでもない」

私は慌てて乃愛に視線を向けた。