「なんか予定でもあるのか?」

「乃愛と一緒に帰る約束をしていて」

「それって絶対に外せない約束か?」

「……」

そんな聞き方をされたらなにも答えることができない。

乃愛と一緒に帰る約束はしているけど、それが絶対に外せない約束かと言われればそうでもなく

この約束はただ私が乃愛と一緒に帰りたいのであって

重要というよりも強い希望なのだから。

考えていたことが顔に出ていたのか

「大事な話なんだけど」

北山先輩は着実に私が断れないような雰囲気を作り上げていく。

それでも、私は北山先輩の言う“大事な話”を聞くよりも乃愛と帰ることの方を望んでいて返事を返す事ができない。

それどころか頭の中では北山先輩からの誘いを断る理由を探していた。

そんな私をまっすぐに見つめる北山先輩。

その瞳は私の返事を待つというよりも私の反応を窺っているように感じた。

そんな視線に晒されながらいい案が浮かぶ訳もなく――

重苦しい沈黙が続く。

重苦しい雰囲気が苦手なのか乃愛はこんな時、絶対にその空気を壊してくれる。

「……姫花」

名前を呼ばれて乃愛に視線を向けると彼女は少し困ったような笑みを浮かべていた。

その笑顔を見て、私は諦めた。

今日は乃愛と一緒に帰れない。

「明日一緒に帰ろう」