とてもじゃないけど納得できないこの状況に苛立ちを通り越して呆れた溜息しか出てこない。

太腿を占領された私は身動きひとつ出来ず退屈な時間を過ごさなければなくなった。

小説や雑誌があればそれを読んで時間を潰す事ができるけど

呼び出された挙句にこんな時間が待ち受けているだなんて予想すらしていなかった私がそんなものを持っている筈もなく。

ほぼ手ぶらでここに来てしまった私が持っているものと言えば……ポケットの中に入っている小銭入れとケイタイだけ。

ケイタイを使って時間を潰そうかと思ったけど、太腿を占領されている今、ポケットからスマホを取り出すのは難しい。

勝手に太腿を占領されているんだから別に先輩に気を遣う必要なんてないんだけど

気持ちよさそうに眠っている先輩の顔を見ると

起こすのはかわいそうな気がしてしまう。

先輩は〝10分だけ〟って言ったし

その位なら我慢できなくもない。

私はスマホを取り出すことを諦め天井をボンヤリと眺めた。

……私、なにやってるんだろ?

そう考えてしまうのは仕方がない。

なんで北山先輩はこんなに私に構うんだろう?

そんな疑問が浮かんだけど

どんなに考えても答えは1つしか浮かばない。

ただの気まぐれに違いない。

ふと、視線を降ろすと北山先輩の気持ちよさそうな寝顔が視界に映る。

サラサラのベージュアッシュの髪。

綺麗に整えられている眉。

薄い唇。

瞼を閉じている所為でいつも幼い印象を受ける目元。

アイドルグループにいそうなこの人がモテる部類だということはなんとなく納得できる。

この容姿に加えて勉強やスポーツができるとなればそれは尚更のこと。

……なんでこんな人が私に執拗に構うんだろう……。

その理由をどんなに考えてみたところで導き出せる結果はいつも同じ。

ただの気まぐれに違いない。