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北山先輩に連れて来られたのは、科学の専門教室のとなりにある準備室だった。

一応、〝化学準備室〟というプレートが掲げられていたけど実際は物置だと思う。

普通の教室の半分ほどの広さのそこはほとんど使われていないらしく足を踏み入れた途端、埃っぽさが鼻に着いた。

壁際に備え付けられた本棚には専門書がズラリと並び

使われていないらしい机や椅子が隅に積まれていて

部屋の中央には誰が使うのか応接セットが置かれている。



「北山先輩?」

「うん?」

「ここって……」

「うん」

「なんですか?」

「見ての通り科学準備室だけど」

「……ここって勝手に入っても大丈夫なんですか?」

「あぁ。去年までいた科学担当の教師が使っていたんだけど」

「科学の先生が?」

「そう。なんか人付き合いが苦手とかで、授業が無い時は職員室じゃなくてここに引き篭もってた」

「……はぁ……」

「でも、その教師が年度末に退職してからはずっと使われていない。事情を知ってる俺達にしてみればかっこうのサボり部屋だけど2年や3年の生徒がサボる為にわざわざこっちの校舎に来るのは面倒だろ?」

「……ですね」

「だから必然的にここに来る奴は殆どいないんだ」

「なるほど」