「……姫花」

私と北山先輩のやり取りを見ていた乃愛が控えめに私の名前を呼ぶからそっちに視線を向けると

〝行っておいでよ〟

彼女はアイコンタクトを私に送る。

……仕方ないか……。

不本意ではあるけど、これ以上ここに居座っても状況は変わらないだろうし

下手をすれば乃愛に迷惑が掛かってしまうかもしれない。

そう考えた私は手早くお弁当箱を片付けると重い腰を上げた。

「行こう」

私の動きに再び満足そうな表情を浮かべた北山先輩が教室の出入り口へと向かう。

それを確認して、チラリと乃愛に視線を向けると同情的な瞳を向けられた。

両手を合わせ口パクで『ごめん』と伝えると顔を左右に振った乃愛が小さく手を振ってくれる。

高校に入って初めてできた女友達。

優しくて

いつも傍にいてくれて

なんでも話す事ができ

乃愛といると笑いが絶えない。

そいう経験が今までない私は楽しくて堪らない。

だから少しでも長く乃愛と一緒に過ごしたいのに……。

約一名。

それを悉く邪魔する人がいる。

……いい加減にしてほしい。

恨みを込めた視線を目の前にある背中に送った途端

「姫花、なにやってんだ? 早く行くぞ」

急に先輩が振り返るから

「は……はい!!」

私は相当焦った。