階段を昇り、廊下を歩いて教室に向っていると

「なぁ、姫花」

突然、瑛太が足を止めた。



「なに?」

「本当に北山先輩とは付き合わないんだよな?」

「うん。付き合うもなにもそのうち飽きてどっか行っちゃうと思うよ。モテる人なら他に彼女候補はたくさんいるだろうし」

にっこりと微笑むと

「分かった」

つられるように表情を緩めた瑛太が再び私の髪を乱雑に撫でた。

「……だから、それ止めてってば」

「はい、はい」

軽く流されて、私は早々に抗議する事を諦めた。

楽しそうに笑っている瑛太を見ているとこっちまでつい笑顔になってしまう。

その時、背中に視線を感じたような気がして

「……?」

私は背後を振り返った。

「どうした?」

「なんか視線を感じたような気がしたんだけど」

「誰もいないぞ」

「……だよね」

瑛太と顔を見合わせて首を傾げていると――

まるで壁を殴りつけたような鈍い音が階段の方から聞こえてきた。



「な……なに!?」

「さぁ、誰かコケたんじゃね?」

「見に行った方がいいと思う?」

「やめとけ。もし、本当にコケてて、そんなところを他人に見られたら立ち直れない」

「……確かに」

瑛太の言葉に妙に納得した私は音の原因が気になりながらも教室へと向かった。