先輩に付き合わされたお蔭で、いつもの帰宅時間より随分遅くなってしまった。

陽は沈み、時間が経つと共に紺から濃紺へと空の色が変化していく。

この辺りは人通りも多くて、治安もいいからこの時間帯だったらまだ何の心配も要らない。

私が住むマンションも駅から歩いて5分も掛からないところにある。

パパが見つけてくれたこの物件は家賃相当に便利がいい。

過保護すぎるパパとお兄ちゃんをたまにウザく感じる事もあるけど、やっぱりそれ以上に感謝しないといけないと思う。

そんな事を考えながら歩いていた私は、思わず足を止めた。

マンションのエントランスから洩れる明かり。

その明かりが当たるか当たらないかの微妙な所に立つ人影。

スラリと高い身長。

セットなんて言葉とは無縁の漆黒の髪。

長めの前髪と黒縁メガネに隠されてその表情を窺うことはできない。

私が通う神代第一高校の制服を身に纏った彼の顔の正面が斜め上を向いている。

その視線の先にある部屋には明かりが灯っていない。

だから不在だってことが一目瞭然だった。

その部屋は私が住む部屋。

不在の私の部屋を見つめる彼。

その姿は不気味とも言えなくない。