「そう言えば……」

なにかを思い出したように口を開いたお兄ちゃんに、私はホッと胸を撫で下ろした。

……良かった。 惚気話から逃れられた。

「この前、俺を見かけたんだって?」

「え?」

「駅の近くで見かけたんだろ? 綾さんから聞いたぞ」

「……あぁ……うん……」

「なんで声を掛けねぇーんだよ? もし、会ったら晩飯でも奢ってやろうって思ってたのに」

「もしかして、計画的!?」

「あ?」

「私に会う為にあそこにいたの?」

「いや、お前に会う為に行った訳じゃなくて、あの近くに用事があって、それが終った時間がちょうどお前の帰宅時間だったからもしかしたら会えるかもって思っただけだ」

「そ……そうだったんだ」

「で?」

「え?」

「なんで、声を掛けなかった?」

「……ちょっと掛け辛い状況で……」

「それどんな状況なんだよ?」