「……なぁ」

低く、それでいて澄んだ声が背後から追いかけてきた。

そう大きくもない声だったけど、無音の空間では自棄に響いたような気がした。

思わず立ち止まり、振り返ると外を眺めていた筈の乾 諒がこっちを見ていた。

茜色の光りに晒された彼の表情が良く見えない。

だけど、彼の視界に私が映っているのはなんとなく分かった。

「……なに?」

私が発した声は明らかに警戒心を色濃く滲ませていた。

自分でもそれがありありと分かるくらいなのに

「担任に頼まれたのか?」

彼はそれを気にする様子もなく尋ねてくる。

「なにが?」

「この前、『困ってることはないか』って聞いてきただろ」

「うん」

「あれって担任に頼まれたから聞いたのか?」

「……だったらなに?」

「もし、そうならかなりのイイ子ちゃんだなって思って」

棘のある言い方に血が頭に昇っていくのが分かる。