初対面の相手にいきなりそんなことを
聞かれたら、普通は怒るだろうが、
すでに、運命とも呼べる偶然のおかげで
そんな気持ちは吹き飛んでいた。
「ううん。いないよ。誰もね」
まだ出会って数時間だが、
まるで、ずっと前からの親友のように
静くんにはなんでも話せていた。
「実は僕もそうなんだ。
だから死のうと思ったんだ。」
静くんはそう言ったが、
一瞬なぜそれが死ぬ理由になるのかが
分からなかった。
「だって、今僕が死んでも
誰も僕の事を覚えてないんだよ。
そんなのって悲しくない?
でも、あそこで首を吊ればきっと誰かは覚えていてくれると思ったんだけどね」
静くんはそう言った。この人は
多分、根っからのアーティストなんだろう
私はそう思った。
私はなるべく目立たぬように生きてきた。
だから静くんの気持ちは理解が出来なかった。
「ねぇ。雪江さん。
僕たちが生きていたって誰かに知ってもらいたくない?」


